「できるけど、やりたくない」──定年後の仕事選びで最初に考えること

仕事選び

「これまでのキャリアを活かせる仕事は、すぐ見つかる。でも、そこに人生の残り時間を全部使いたいかと言われると、迷うんです」

わたしが転職相談を受けるなかで、何度も耳にしてきた言葉です。

以前、40代後半のITエンジニアの方から相談を受けました。大手銀行のシステム開発に長く携わってきた方で、ご本人いわく「転職しようと思えば、秒で決まる」レベルの専門性をお持ちです。

それでも、迷っていました。

「確かに稼げるし、再就職先にも困らない。でも激務で、子どもはまだ小学校低学年です。これから10年以上、同じ働き方を続ける気になれなくて」

彼は40代ですが、この「できるけど、やりたくない」問題は、定年後の仕事選びで一番多い相談でもあります。第二の人生で働こうと考えたとき、多くの人がここで立ち止まります。

悩みの正体:3つの軸がズレている

このとき、頭の中で3つのものさしが絡まっています。

  • できる:これまでのスキル・実績で可能な仕事
  • やりたい:気持ち・時間の使い方として望む仕事
  • 稼げる:収入として成り立つ仕事

キャリアで築いたものが大きいほど、「できる」の選択肢は広くなります。でも、それが「やりたい」や「稼げる」と重なるとは限りません。

特に定年を境に、「やりたい」の優先度が一気に上がります。残された時間が、現役世代よりずっと意識されるからです。

最初にすること:お金から逆算する

迷っているとき、わたしは必ずこう聞きます。

「月いくら必要か、考えたことありますか?」

多くの方は、漠然と「老後のためにたくさん稼がないと」と感じています。でも、具体的にいくら必要かを計算したことがある人は、意外と少ない。

ざっくりでいいので、書き出してみてください。

  • 毎月の生活費(住居費・食費・光熱費・保険・交際費など)
  • 年金・退職金でカバーできる金額
  • 足りない分が「働いて稼ぐ必要のある金額」

差額が月5万円なのか、月20万円なのかで、選択肢はまったく変わります。月5万円で足りるなら、週2〜3日の仕事で十分。激務の仕事にこだわる必要はありません。

思ったより少ない金額で足りると気づくケースは、実はとても多いです。

次にすること:時間の使い方を決める

お金の目安がついたら、次は時間です。

  • 週何日・1日何時間までなら、ストレスなく続けられるか
  • 人生の残り時間を、何に使いたいか(家族、趣味、学び、健康づくり…)

冒頭の彼の場合、「子どもとの時間」が最優先でした。子育てが落ち着くまで、あと10年以上ある。その時期を激務で家にいないのは嫌だ、と。

定年後の方なら、「健康寿命」を意識される方も多いです。元気に動ける時間は、思っているほど長くないからです。

この「時間の使い方」が決まれば、**「できる仕事のうち、やりたい時間の使い方に合うもの」**という条件で絞り込めます。

最後にすること:家族と合意する

ここまで自分の中で整理できたら、必ず家族と話してみてください。

特に配偶者がいる場合、以下の3点は必ず温度差が出ます

  • お金を稼ぐ役割のバランス
  • 家事・育児・介護の分担
  • これからの生活レベル

自分ひとりで決めて、後から伝えると、ほぼ確実にモメます。

冒頭の彼にも、こうお伝えしました。

「奥さんも働いていて、お子さんはまだ小さい。ふたりで子育てをしていく段階だから、『自分がどう働くか』は夫婦の問題です。奥さんが何を優先したいかも、ちゃんと聞いてみてください」

定年後の場合も同じです。配偶者が「もっと稼いでほしい」と思っているのか、「一緒に過ごす時間を増やしたい」と思っているのかで、選ぶ仕事はまったく変わります。

まとめ:迷ったら「お金 → 時間 → 家族」の順で考える

「できるけど、やりたくない」と感じたら、いきなり求人を比較しないでください。その前に、この3ステップに立ち返ってみる。

  1. お金:いくら稼げば足りるか(逆算する)
  2. 時間:どれくらい働きたいか(残りの使い方を決める)
  3. 家族:意向は揃っているか(温度差を話し合う)

順番がとても大切です。 仕事のリストから考えると、ほぼ必ず迷子になります。

まずお金の輪郭を描く。それから時間を決める。最後に家族と握る。この順番で、選択肢はぐっとクリアになります。


自分の「これから」そのものを見つめ直したい方は、姉妹サイト「定年後の地図(note)」もあわせてどうぞ。

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